2013年7月5日金曜日

きゃりーぱみゅぱみゅと日本文化コード

 月曜日の地域社会学の授業中、東京発のサブカルチャーが取り上げられた、なぜオタク文化などは東京発か、またなぜこのような文化は欧米で受けるかという問題を巡って、少し議論したが、時間の問題であまり深く話し合われなかった。で、今回の記事では、授業中出てきたきゃりーぱみゅぱみゅの例を中心に論じたい。
 皆はもうきゃりーぱみゅぱみゅ知っていると思うので、紹介は省略させてもらおう。私初めて聞いたきゃりーぱみゅぱみゅの曲は「つけまつける」だった。メロディが単一で、歌詞もあまり内容がない、そんな歌は大ヒットになるなんて理解できなかった、その後「PONPONPON」を聞いて、急にはまってきた。なぜはまってきたのか自分もうまく説明できないが、「PONPONうぇいうぇいうぇい」このワンフレーズが頭の中で何度も繰り返されて、いわゆる「ディラン効果」である(笑)
 本題に戻るが、なぜきゃりーぱみゅぱみゅが人気になれるか。自分が考えたいくつの理由を説明しよう。

一、洗脳ソング
 初めて「洗脳ソング」この言葉を聞いたのはあの有名な「甩葱歌」だった。
(『初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた』にアレンジ加えてみた
  歌は http://www.nicovideo.jp/watch/sm1324740 まで参照)
 この歌は中国にもすごく受け、ボカロ人気の始まりと言っても過言ではない。その後は「らき☆すた」のオープニング「もってけ!セーラーふく」、一度見たら忘れられないくらい強烈なものであり、歌詞は理解不能に近いので、「電波ソング」と呼ばれる。要するに、このような特定の歌詞やメロディを繰り返すことによって、印象を残させ、頭がパーントランス状態に陥って、マインドはまるでコントロールされるようになる。
 きゃりーぱみゅぱみゅの歌詞を見れば分かると思うが、どっちでも繰り返す部分が多い。例えば
つけまつけま つけまつける
ぱちぱち つけまつけて
とぅ CAME UP とぅCAME UPつけまつける
ぱちぱち つけまつけるの
ぱっちりぱちぱ おめめのガール
ぱちぱち つけまつけて
つけまつけま つけまつける
かわいいの つけまつける
あるいは
CANDY CANDY CANDY CANDY CANDY
CANDY CANDY CANDY CANDY CANDY
CANDY CANDY CANDY CANDY CANDY
SWEETIE SWEETIE GIRLS LOVE
CHEWING CHEWING CHEWING CHEWING CHEWING
CUTIE CUTIE XXX CHEWING LOVE
CANDY CANDY CANDY CANDY CANDY
SWEETIE SWEETIE GIRLS LOVE
CHEWING CHEWING CHEWING CHEWING CHEWING
CUTIE CUTIE SO CANDY LOVE 
このような意味性が薄くて、繰り返す歌詞やメロディを使って、皆を「中毒」させる。
 正直に言うと、きゃりーぱみゅぱみゅは歌が上手い方ではない。実際中国のJPOPファンの中でちょっと「バカ」にされる存在、「顔も実力もないのになぜか売れた」と。それにしても、一度聞くと誰でもマネできて、頭から離れない。

二、可愛さの文化コード
 日本音楽市場では、JPOPは約四分の三に占めている。日本国内では、JPOPの売り上げは圧倒している(多分最近KPOPの割合が上昇している)のに、海外ではJPOPは全く売れていない。JPOPの音楽を買うのは、99.4%が日本人ということがあって、JPOPのファン=母文化は日本文化の人と言っても過言ではない。要するに、JPOPは強いローカル性があり、それを好む日本人の心理をより強く反映していると考えられる。
 世界中受けたいなら、ローカル性だけではなく、グローバル性も必要だと考えられる。では、きゃりーぱみゅぱみゅ音楽のグローバル性は一体なんだろうか。
 私はそれが「かわいさの文化コード」だと考えている。世界各国における、「美しさ」に対する考え方は大きな差異があるかもしれないが、「かわいい」は普遍性があると思う。サブカルチャーが流行っているなか、「kawaii」はすでに英語の外来語として使われているが、英語の中、同じ意味の「pretty」や「cute」等の言葉は昔から存在している。
 「かわいい」と言ったら、何か思い浮かべるだろうか。リボン?キャンディ?ピンク?動物?実際このようなものは世界中でもかわいいと思われる。このようなかわいさと連想できるものはきゃりーぱみゅぱみゅのMVの中でいっぱい出てくるので、国問わず誰でも受け止める。「PONPONPON」や「つけまつける」はその代表である。


しかし、日本人にとって「グローバル性」となるものは欧米の人にとって「ローカル性」(これはきゃりーぱみゅぱみゅは和製ガガと呼ばれる理由の一つだと思う)にすぎないので、欧米人にとっての「グローバル性」はなんだろうか。それはきゃりーぱみゅぱみゅ音楽の独特な世界観、私はそれを「想像される日本」だと呼ぶ。

三、想像される日本
 欧米の人にとって、日本と言ったらまず忍者だろう。「にんじゃりばんばん 」の編曲で日本の楽器が聞こえるし、MVのなかで出てきた着物、忍者、灯籠は日本文化を想起できる。欧米人はこれを見て、間違えなく「これは日本だ!」「これは日本の音楽だ!」と思っちゃうだろう。

 同じように、「ふりそでーしょん」は「成人式」をテーマとして、「振袖」の日本文化コードと大人になる普遍的な迷う気持ちと組み合わせ、受けるのは当然だと思う。(色具合は白と赤で、それも日本の色だと想起させ、わざとやるだろう)


 さらに、「ファッションモンスター」の中で登場したおじいさんはどんな役割を果たすのだろう。私はそれがファッション(=グローバル性)と対比する伝統的な日本文化(=ローカル性)だと想定する。おじいさんの和服、剣道は日本の文化代表で、MVのなかきゃりーぱみゅぱみゅがおじいさんと一緒に立っているシーンはファッションとローカル(グローバルとローカル)の調和だと理解してもよいだろう。


 きゃりーぱみゅぱみゅの動画のコメントを見れば分かると思うが、コメントの多くは「I love Japan」と書いてある、きゃりーぱみゅぱみゅはもはや歌手を超えて、日本の代表(コード)になりつつある。

四、運営
 日本の音楽界はまだ20世紀にとどまるイメージがあるとずっと思う。音楽の内容や特徴などそういう面ではなく、運営の方法である。みんなはあまりにもテレビ(視聴率)を重視しすぎて、インターネット上の宣伝は多少足りない感じがする。テレビの宣伝をどんだけうまくやっても、国内向けにすぎないから、海外に進出したい場合、youtubeなど欧米向け(いわゆるアメリカ発のソーシャルメディア)を利用したほうがいい。きゃりーぱみゅぱみゅの運営側はこの辺に強いと思う。最初からyoutube、itunes storeに力を入れて、今いい結果を得た。もし海外に進出したい場合、ほかの運営側もきゃりーぱみゅぱみゅの事例を見習ったほうがいい。

 もちろん、きゃりーぱみゅぱみゅさんの成功はこれだけの原因ではない(性格、センスの原因もある)、自分もちょっと過度分析した気がするが、サブカルチャーは研究対象として大変面白いと思う。

6 件のコメント:

  1. まさかブログで、きゃりーぱみゅぱみゅをここまで、客観的に分析している記事があるとは思いませんでした。(笑)

    とても面白い論評に楽しませてもらいましたよ。

    音楽的な観点から見ると、やはりきゃりーぱみゅぱみゅの曲にはダンスミュージックでよく使われる、ツービート、いわゆる人が歩くテンポの曲調が多いのが特徴ですね。

    日本経済の不景気(もしくはそれに付随する何か暗い雰囲気)から、抜け出そうとする前向きなリズム感が、きゃりーぱみゅぱみゅの曲の人気の根底を支えているような気がします。

    もっとも、コンポーザーの中田ヤスタカさんがそこまで考えて作曲しているのかは定かではないですが。

    サブカルチャーを研究することで、その国独自の文化性や、経済的な背景なども知ることができるので、面白いトピックですよね。(笑)

    そうさんも、サブカルチャーにだいぶ興味があるようなので、今度ゆっくりお話でもしましょう♫

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございました。

      私音楽についてあまり詳しくないですから、音楽の観点からコメントをいただいて、本当に勉強になりました。

      昨日地域社会の授業中でこれを発表しました。先生はPONPONPONのMVを見て、これ絶対欧米の人を狙って作った曲だとおっしゃいました(笑)欧米の童話など文学作品の中で出てきた幻想世界を意識したので、欧米人が受けると(笑)

      また、ほかの人のコメントもいただいて、創造都市論の視点から見ても面白いと感じました。

      また時間があったらぜひ一緒に話したいですね^^

      削除
    2. 僕の話は適当なんで、流しても構いませんよ?(笑)

      でもPVなんかはまさにそうですよね~欧米を意識して作ってる感じがします。

      でも文化的に見ると、逆輸入って感じがしてどうも、、、

      日本人は、西洋のコンセプトを改変(アレンジ)して完成させる技術に特化しているので、そのあたりは上手いですよね。

      これからの日本人はいかにして世界を相手にオリジナリティを提供していくかが鍵ですね。

      もちろん中国もそうなんでしょうけど。

      余談ですが、最近ハマっているサブカルチャーは、H.P.ラブクラフトのクトゥルフ神話ですかね、結構興味があります~。(笑)

      削除
    3. ラブクラフトのクトゥルフ神話?這いよれ! ニャル子さんなら知っています(笑)

      削除
    4. たぶん、ナイアルラトホテップのことですかね??

      あまり日本でどのように引用されているのか詳しくなくて、申し訳ない。(笑)

      ただ、スティーブン・キング原作の映画「ミスト」は好きですよ♪

      まさに、コズミックホラーって感じの作品で、賛否両論らしいですがw

      削除
    5. そうですw

      「ミスト」か、時間があったら見てみますwオススメありがとう!

      削除