2019年10月8日火曜日

なぜ中華ドルオタ界隈では「公式が最大手」という概念が存在しないか

 先日角川にて「中華オタク用語辞典」の勉強会をやらせていただいた。事前にいただいたご質問のなかに、大変興味深いのがあった。

「発糖」の項の「糖里有毒」、わかる!と思いました。これのバリエーションだと思いますが、「砂糖にガラスの破片が混じっている」という意味の中国語の言い回しがあるとネットで見かけました。こういう表現、もっと教えてください。
(これはアイドルオタク用語ということですが、四字熟語の章で取り上げられている「官逼同死」も公式からの供給を指す言い回しですね。アイドルとアニメで言い方が違うということでしょうか。その違いを知りたいです)

  質問の前半は、元ネタのツイートの返信を見ていただくといろいろとバリエーションがあるので、ここでは割愛とする。後半の、アイドルとアニメで言い方の違いについて、少し極端な言い方になるが、私の見方として、中華ドルオタ界隈では「官逼同死(公式が最大手)」という概念がそもそも存在しない(ここのドルオタは男性アイドルが好きな女性と限定させていただく)。この記事では、この理由について深掘り、勉強会でやや不十分な解答を改めて整理・補足したいと思う。

 私は日本のアニメ・マンガなど、いわゆる「二次元」のコンテンツを主食としている。こんな私だが、四、五年前に中国の少年アイドルグループ「TFBOYS」をハマったことがある。当たり前のことに、ドルオタはアニオタと喋ってる「言語」が違う。「中華オタク用語辞典」で取り上げたアイドル用語はまさに私がこの時期学んできた言葉ばっかりであった、もちろん、言葉だけではなく、ドルオタとアニオタの文化違いも興味深い見ていた。
 前置きが少し長くなったが、本題の「なぜ中華ドルオタ界隈では『公式が最大手』という概念が存在しないか」について、私の仮説は、「ドルオタのカースト、腐女子が最下位だから」である。

 完全に私の独断と偏見だが、ドルオタのカーストをざっくりイメージ化したらたぶんこんな感じになる↓(それぞれ中国語の詳しい解説は「中華オタク用語辞典」をご参照ください)

 
 つまり、単推しが一番えらく、彼女たちは箱推しをライバル視し、掛け持ちを見下しているのだ。彼女の理屈は分からなくはない。

  • 箱推しは事務所や運営に洗脳されている、グループ内のバランスを維持するのに自分の推しが不利益になる
  • CP厨や腐女子が好きなのは「腐向けコンテンツ」であり、アイドルそのものではない
  • CP厨や腐女子はエサがあるから掛け持ちしている、推しへの愛が不純すぎ
  • 掛け持ちも、実際平等に二人を扱っていない(より受けが好きか、より攻めが好きかなどの傾向がある)

 このように、推しにすべての愛をささげ、一番純粋な心を持つ単推しのファンはカーストの上位にとった。
 
 私自身は腐女子であり、TFBOYSをハマったときもメンバー同士のカップリングが好きだった。日本も同じように、実在人物同士のカップリング、いわば「生もの」の取り扱い注意への呼びかけは常に行われているし、二次創作力が高く、購買力もあるもののあまり堂々とアピールできない気まずい立場になっている。ましに、TFBOYSメンバーがデビュー時、全員未成年なので、その辺への自粛がさらに厳しかった。なので表面上、各メンバーの単推しファンがファンの大部分を占めている(ここではTFBOYSを例にしたが、TFBOYSに限らない話だと思う)
 また、日本の場合だと事務所の力が強く、傘下のアイドルはどのような戦略を取るか、事務所自分自身が決まるもの、ファン内部のルールを作ってあげたりもする。中国はある意味真逆かもしれない、ファンは力持ちで、ファンが事務所をチェックする目線も厳しい。単推しも箱推しもおそらく一番恐るのは、アイドルが人気になっても「腐女子に媚びるから人気になった」というレッテルが剥がれないこと(あまり王道じゃないからかな?)、事務所もある意味これを恐れ、下積みの時期はまだこの辺の企画をやるかもしれないが、少しだけでも人気が出たらすぐ路線を変えたりする。当時の活動も黒歴史扱いか、全く触れなくなる。
 つまり、単推しメンバーのファンが大多数、腐女子に媚びる必要があまりない、媚びたところで炎上したら怖い、という理由で事務所主導の「公式が最大手」行為がほとんど存在しない結論になる。

 (腐女子が不憫に思ってしまったよ・・・)