2019年1月10日木曜日

前澤社長に知ってほしい中国版ツイッターの「お年玉キャンペーン」事情(上)

 前澤社長のフォロー&RTでお年玉あげるキャンペーンは昨日で終わった。変なところでプライドを持つオタクなので、前澤社長本人はフォローしていないし、元のツイートもリツートしなかった。それでもツイッターにおいてのお祭り状態、インフルエンサーによるSNS運営系の考察ツイートは面白く拝見させていただいた。
 タイミング的にちょうどPaypayの「100億あげちゃうキャンペーン」に近いので、この二つの事例をあげながら分析した方は少なくない。確かに手法やインパクト、効果などが近く、比較対象として分かりやすいが、スコープは日本国内だと少しもったいないと感じた。というのは、前澤社長ご自身は専属アシスタントを起用するほど中国SNS上のアピールを重要視している、今後「お年玉キャンペーン」と似たような手法で中国SNSで影響力を拡大するかもしれない 。WeiboとTwitter、それぞれサービスとしての機能、ユーザー利用習慣、利用層が異なるなか、どういった点を配慮すべきかについて解説していきたいと考えている。前澤社長のみではなく、中国SNS運用に興味がある方であれば、少しでもお役に立てればと考えている。
(もう知ってたよっていうなら、ごめんなさい…)

 それでは本題に入るが、主に二つの部分に分ける。第一部では、もしも中国のweiboで「お年玉キャンペーン」をやろうとすると、どういう仕組みを利用するかについて概要的な説明となる。第二部では、実際のケーススタディで「お年玉キャンペーン」を利用して影響力拡大を狙っているならどうすればいいかの分析を試みる。

1、Weiboの「お年玉キャンペーン」こと微博抽奖(weibo福引き)

 前澤社長の「お年玉キャンペーン」で当たった人の特徴をまとめた投稿を拝見させたが、「実名」「顔出しアイコン」「夢を具体的に語った」と三つほどあげられた。フォロー&RTを条件することに裏返し、実際のやり方は懸賞形式。Twitter社は抽選するアプリケーションがないし、ZOZO社的に「夢」を売りにしたいので仕方がないと納得つくが、中国版Twitterことweiboで展開すると、このやり方はまずできない。その理由は、weiboの「微博抽奖」機能(以下「weibo福引き」とする)は特定の誰かを抽出することができなく、全てアルゴリズムによるコントロールするものだからだ

 今だに利益を伸び悩んでいるTwitter社と違い、weiboは近年着実に利益を上げつつある。利益基盤の安定はweiboコア機能の新規開発にも繋がっている、抽選機能を果たすweibo福引き機能も近年リリース[注1]されたコア機能の一つである。
    利用マニュアルによると、weibo福引きはweiboユーザー全員が利用できる機能である、ただし当選者を絞る条件を設定できる範囲は無料/有料会員によって異なる。さらに有料会員でもランクが存在し、高い年間運用料金を払うほどより細かく設定できるとのこと。

 オレンジ色のバッジと金色の王冠から推測すれば、前澤社長はweiboの有料会員である。

前澤社長のweiboプロフィール
有料会員の中でもランクがあると前述したが、どういうランクなのかはまだ判断材料が少ないので、仮に1億円現金を配ろうとしたら、高級版(年間運用費5000元)を支払うのは最低条件である。

福引き権限一覧表。「微博抽奖平台高级功能介绍」より

 表の一番左、青の列は当選者の属性を指定する条件である。主に分類すると以下の三パターンである。
福引きのフィルタ:なし、あり(通常)、あり(強度)
福引きの前提条件:フォローする、共通フォロワー、地域、キーワード
福引きのトリーガー:他人にメンション、コメントする、いいねを押す
前提条件とトリーガーについて、Twitterを利用したことがある方なら理解しやすいと思うが、最初のフィルタは何かというと、weibo独自のアルゴリズムである。アルゴリズムの中身はもちろん企業秘密だが、以下weiboのCEO王高飛の発言から分かったことは、アクティブユーザーを判別する仕組みであり、ユーザーの利用行為はそれぞれ重さが違ってくる。結果的に、ROM専だとbotだと判定されやすく、写真を投稿したり書き込んだりすると提供できるユーザーは本物だと判断され、結果的に当選しやすい。


WeiboCEO王高飛の投稿
 冒頭でも説明した通り、フィルタなど条件の設定で当選者を絞られるが、人為的に福引きの結果を左右することができない。Twitter的な懸賞方式が利用できないが、誰でもあたりそうという可能性にかけて中国でやろうとしても記録的な数字を出せるのではないかと考えている。逆に応募者目線で考えると、日頃からコツコツ投稿しておくことは当選されやすくなる。

 感がいい人はここで気づいたと思うが、上記weiboのCEO王高飛が言及した内容は次回ケーススタディの一つ事例となる。さらに面白いことに、この記事を書いてる本日、前澤社長はご自身のweiboで以下のように投稿した。引用された中国ビジネス専門メディア「財政網」は前澤社長のことを「日本王思聪」という風に紹介した。

中国ビジネス専門メディア「財経網」が「お年玉キャンーン」を取り上げたことに対して、前澤社長は「夢について語ったリプライを見て感動した。1億円を払った甲斐があったと感じ、今後もみなさんに喜んでもらうようなことをしたいし、中国の方々にも夢を与えたい」と公式コメントした。
王思聪は中国不動産巨頭の御曹司で、私が今回冬コミで頒布した『中華オタク表現辞典』の中でも少し触れていたが、彼は大金持ちでありながらもネット上で素な発言をしたりして若い世代の共感を呼んでいる。そして彼は今まで何回も福引きキャンペーンを開催し、毎回記録的な数字を出している。彼の事例を取り上げて次回の記事で分析していきたいと考えている。また一般ユーザーによる意外すぎる福引きの使い方についても、ケーススタディのもう一つの事例として取り上げる予定。
それでは次の記事で!


注1:リリースされたのは2015年5月20日だと思われる。出典:https://www.weibo.com/5581785513/CiIxrbfPD?from=page_1006065581785513_profile&wvr=6&mod=weibotime&type=comment