2016年10月1日土曜日

なぜいまの中国でも字幕組を必要とするか(上)

 最近、中国人字幕組メンバーは逮捕されたニュースがツイッターであっちこっち拡散されている。個人的に興味深いと思うのは、違法アップロードされたアニメは「アルスラーン戦記」であることだった。
 中国のネット事情をご存知の方だったら分かると思うが、最近の中国動画配信サイトは正式放送がほとんどで、「アルスラーン戦記」につきまして、少なくとも3社(bilibili動画、PPTV、iQIYI.COM)が放送権を所有している。さてここからは本題、なぜ正式放送へシフトしつつなか、未だに字幕組への需要があるだろうか。少なくとも三つの原因があるかと私が考えている。


①字幕組の選別から見えるオタクとしてのリテラシー
 今時オンライン、いわゆる動画配信サイトでアニメ番組を見る中華オタクが多いと思うけれども、少し前の中国は字幕組の戦国時代であった。原因の一つは中国動画サイトの放送権購入、もう一つはダウンロードしなくてもローミングかオンライン視聴ができる携帯電話やインターネットなどITインフラの整備だと考えられる。
 コンテンツ自体区別がないなら、どうやって自分が作成した字幕をより多くの人に見てもらおうかというと、より高画質の映像を提供するのもそうだし、やはり字幕への工夫がポイントである。字幕作成のスピードはもちろん、翻訳の正確性、元ネタの解釈、日本語字幕の提供、字幕スタイルの調整(サイズ、色、フォント、アニメーション)などなど様々な工夫が必要とされる。作品への愛がない限り、オタク知識が豊富でない限り、なかなかできないタフな仕事だと思う。そして、それを分かって、あえてこだわりを持って選ぶこそ中華オタクだ。
 私が字幕組をよく利用した時のことになるけれども、字幕組によって得意とするジャンルがある。そのオタクが利用する字幕組によってオタク歴を判断することは、少なくとも私がある。
 いくつの例をあげよう。
 猪猪字幕組:スピードが一番早いが、間違いが多い。素人が選びがちの字幕組
 極影字幕組:最大級だと言われるBTダウンロードサイトを所有し、ダウンロード量が圧倒的に多い
 澄空学園:ギャルゲー掲示板発祥の字幕組なので、ゲーム原作のアニメに強い
 華盟字幕組:翻訳の質が高く評判よい。ただしスピードはやや劣る、根強いファンが多い
 HKG:遊び心があって個性が溢れる字幕組。センスのいい翻訳で人気が高い
 軽之国度:ラノベ掲示板発祥の字幕組。ラノベ原作のアニメに強い
 WOLF:腐向けアニメに評判のある字幕組
 諸神字幕組:日本語/中国語両方字幕を提供するので、日本語学習者の中で人気が高い
 千夏字幕組:百合アニメが得意
 LAC:銀魂専門の字幕組。細かい元ネタの説明が良心的だと評価されている
 このように、一見同じように見える字幕組だが、それぞれ個性があり、強み弱みがある。見るアニメによって違う字幕組を選びたいならオタクとしての高いリテラシーが必要である。自分が「分かる」オタクを示す一つの手段でもある
 
 ところで現在、動画サイトで正式放送される場合、代理店や業者にお願いすることが多い。下の図はビリビリ動画正式放送版「食戟のソーマ」のスクリーンショット、ご覧の通り、字幕は代理店が翻訳したものである。


 業者さんの字幕は基本オタクたち最低限のニーズしか満たせない。元ネタの解説はもちろんないし、OPやEDの歌詞もそんなに気を使わない。それに不満があり、依然として字幕組を利用することが多いと推測できる。その代表例は、正式放送の黎明期の時、「銀魂」の字幕をめぐっての争いである(詳細は過去記事を参考してください:八子のブログ(旧館)最近の事件から見る中国オタク向け動画サイト)。また、オンラインで視聴した後、画質がよく、完成度の高い字幕組のアニメファイルをダウンロードし、コレクションをする中華オタクも依然として多いであろ。

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