2016年9月24日土曜日

Bilibili取締役陳睿のスピーチを翻訳してみた(下)

Bilibili取締役陳睿のスピーチを一部翻訳してみた(上)

 鬼畜もビリビリ動画で特徴のあるコンテンツの一つです。鬼畜は自虐ネタで、もともとは二次創作用語でした。初心者のうp主の作品がひどくて見づらかったので、「鬼畜」だと揶揄されています。ただし、ちゃんとできた鬼畜作品は本当に面白くて、私たちが馴染んでいる作品を違う形で表現できます。

 人文科学もビリビリ動画で言及するに値するコンテンツです。その代表的なドキュメンタリーは「我在故宫修文物(私は故宮で文物を修繕している)」です。放送されてから、登場人物の王先生は大人気になりました。この王先生は故宮で30年以上働いている普通の従業員です。このドキュメンタリーは中国中央電視台が制作したもので、私たちは放送権を買いました。若者はこのドキュメンタリーを見て感じたのは、職人気質というのは日本だけのものではなく、私たち中国においても職人がいますし、日本の職人気質はそもそも中国からのものでした。もし百度(中国の検索サイト)でこのタイトルを検索したら、ビリビリ動画は必ず検索結果に出てきます。ビリビリ動画はこの後、中国中央電視台と共同制作をすすめ、今年中劇場版を出す予定です。

 ビリビリ動画のユーザーがすごく若いです。テンセントの統計によると、0~17歳のユーザーが大部分に占めています。次は18~24歳のユーザーで、25歳以上のユーザーは10%弱です。25%のユーザーの年齢は未公開なので、実際、ビリビリ動画では17歳以下のユーザーはおそらく半分以上を占めています。18~24歳のユーザーはだいたい30%です。ちなみに、私たちオフライン調査の結果によると、北京・上海・広東の大学生と中学生の中で、ビリビリ動画のユーザーは学生の半分以上に占めています。一方、ビリビリ動画の本拠地である上海の調査結果を見てみますと、復旦大学でよくビリビリ動画を利用する学生は94%でした。

 こういった若いユーザーとよく交流するようになったら、彼らに対してより深い理解を得ました。大人たちはよく「90年以後生まれの子はサブカルチャーしか興味ないのでは」「00年以後生まれの子はもう彼氏/彼女作っているよね」と心配をしています。実は今時の子供は前の世代よりずっと強いです。90年以後生まれや00年以後生まれの子たちは子供の時から豊かな生活を送っていますし、いい教育を受けていますので、自国の文化に自信があります。彼らは道徳・自立・教養のある世代です。彼らは著作権を大事にしていて、 列に割込みやコネを使うような行為に反感を持っています。彼らは本当に自信のある世代です。
 
 90年以後、00年以後生まれの子供は私の世代とそんに違うのは、物質生活や教育だけではなく、彼らは早いうちにインターネットを利用したからだと思います。インターネットは大変よいもので、人の視野を広げ、人とのコミュニケーションを促進できます。

 私は1997年、19歳のときインターネットを利用し始めました。その後、私が22歳になったとき、やっと仕事でブロードバンド ネットワークを利用するようになりました。その後私が三ヶ月間で見たアニメ、漫画、映画の数はこの22年間見たものより多かったです。最近、上海の高校にも調査に行ってきました。その中で1000本以上の映画を見た高校生はすごく多かったです。私と同年代の人なら、1000本以上の映画を見た人はそんなにいないと思います。時々私は考えています、なぜアメリカは2005年のとき、YOTOがあって、なぜアメリカ人が彼ら独自の文化を持っていますかと。それは、1970年代からアメリカの家庭ではビデオテープレコーダが使われているからです。彼らはインターネットが誕生した前、すでに創作できる環境が整っています。しかし、中国人はインターネットが出来てから視野が広くなって、創作の環境を手に入れました。私たち中国人と外国人は同じく創造力を持っています。唯一の違いは、私たちの視野が狭かったです。しかし、90年以後、00年以後生まれの子供たちは違います、彼らは本当の創造力を持つ世代です。

 ビリビリ動画はコンテンツを作るコミュニティではなく、クリエイターにサービスとプラットフォームを提供する会社だと思います。私たちはコネクターでうp主とユーザーをつながります。個性的かつ多様な文化を好む人々がビリビリ動画は楽園だと本気で思わせたいです。

 私たちの次の世帯なら各種のクリエイターツールを熟知していて、一人一人はクリエイターになれます。ビリビリ動画は彼らを支えるプラットフォームになりたいです。私たちはオンラインのサービス以外、BML(Bilibili Macro Link)というオフラインイベントも主催しています。オフラインでうp主と視聴者たちが出会える場を提供します。

 今年のBMLでは、洛天依の登場は一番注目されていて、来場者数は1万人を超えました。洛天依はビリビリ動画の心を象徴しています。洛天依はあくまでもプログラムです、しかし私たちクリエイターが曲を作り、彼女に歌わせました。数えられない曲は洛天依に生命力を与え、彼女はメルセデス・ベンツ文化センターの舞台でコンサートを開催するこを実現しました。なぜ人が集まりましたか、それはうp主とビリビリ動画は彼らに楽しい思い出を提供し、彼らはうp主とビリビリ動画に感謝しているからです。楽しみを作り、多様な文化を作り、次世代の文化の楽園としてのビリビリ動画を作り、それが私たちがやりたいことです。

2016年9月23日金曜日

Bilibili取締役陳睿のスピーチを翻訳してみた(上)

出典:http://36kr.com/p/5053318.html

※全文翻訳ではなく、自分が思うポイントのところのみ翻訳した(8割程度
※意訳である

 2009年、ビリビリ動画はオタクのみで作られたコミュニティでした。その時、ユーザー数が少ないでしたが、ユーザーの属性が統一で、コアなオタクばかりが集まってきました。このコミュニティではオリジナル/創作が好まれ、コアなオタクたちのニーズを十分に満たしたため、規模が少しずつ大きくなりました。アニメから歌ってみた、踊ってみた、テクノロジー、ファッション、生活、鬼畜など様々なコンテンツを生み出しました。

 現在のビリビリ動画では、人気検索タグはすでに7000以上を超えました。なので、今のビリビリ動画は7000種類人気のあるクラスターによって構成されたコミュニティだと言ってもよいでしょう。ビリビリ動画をよく利用する人は「万能のビリビリ」という言葉を聞いたことがあるだろうと思います。それは、ビリビリ動画では様々な人が集まってきたからです。

 趣味で集まった人々が増え続け、現在1億のアクティビティユーザー、百万のアクティビティうp主を有します。毎日万レベルの動画はアップロードされ、その中九割がオリジナル作品です。

 ビリビリ動画代表的なコンテンツといえば、アニメが挙げられます。ビリビリ動画でアニメを見ると、弾幕=コメントがあります。このコメントはサイトの機能の一つだけではなく、気持ちを表すツールでもあり、他のユーザーと一緒にアニメを見るという連体感を与えます。

 日本のアニメだけではなく、中国オリジナルのアニメも注目されています。はじめから、ビリビリ動画では中国オリジナルアニメ作品のファンが集まってきました。ビリビリ動画は最大級の国産アニメファンのコミュニティだと言えってもよいでしょう。ほとんどの中国オリジナル作品はビリビリ動画で配信されています。

 「那年那兔那些事儿(その時、その兎、その出来事)」は完全なる国産オリジナルアニメで、しかもネット上コミュニティ発祥でした。愛国テーマにしたアニメなので、弾幕=コメントを見る限り、共感したユーザーが多いと感じました。若者がこのアニメを見ると、愛国主義の教育にも受けられます。今まで説教の愛国教育と一線を画し、共感が得られるものでした。

 私はビリビリ動画を運営する時、感じたのは、若者(90年以後生まれ、00年以後生まれ)は実にこの国を愛しています。彼らの生活が豊かで、いい教育を受けています。彼らは本気で中国で生まれて良かったと思っていますし、彼らは本気で中国を愛しています。

 次は音楽コンテンツを紹介したいと思います。ビリビリ動画では、毎日1000以上のオリジナル曲が投稿され、ビリビリ動画はすでに中国最大級のオリジナル音楽コミュニティになっています。今年李宇春は湖南衛星テレビで歌った曲はビリビリ動画発のオリジナル曲で、VOCALOIDキャラクター洛天依歌ったものでした。当時、たくさんのマスメディアはこれについて報道し、「二次元と三次元の壁をやぶった」と言いました。
 
 音楽コンテンツについて、「九九八十一」の例もあげたいと思います。それは複数のうp主によって共同創作のオリジナル曲でした。2016年の旧暦春節、彼らがこの中華風のソングを発表しました。ちなみにタイトルとテーマは「西遊記」からでした。この曲の面白いところは、「西遊記」中の登場人物を全て性転換をしたことでした。この設定はユーザーたちに大変受けまして、二次創作物まで出てきました。ビリビリ動画においては、音楽創作は大変活気のあるクラスターだとお分りかと思います。

Bilibili取締役陳睿のスピーチを翻訳してみた(下)

2016年9月22日木曜日

細かすぎて伝わらないビリビリ動画の弾幕事情

 中国のオタク事情に少しでも理解がある方だったら、一度ビリビリ動画のことを聞いたことがあるだろう。
 最初はニコニコ動画のパクリとして知られ、しかし動画サイトとしての完成度は日本人オタクの中でも話題になった。最近、日本アニメの正式放送権[注1]を得たり、日本のモバイルゲームの代理権[注2]を獲得したりして、動画サイトだけではなく、中国オタク文化一つ重要なプラットフォームとして広く知られている。
「本家」のニコニコ動画に似ているけれども、ビリビリ動画は中国独特のオタク文化を生み出している。同じく「弾幕」[注3]でも、違う使い方がたくさん見られる。本記事では、こういった違う使い方をいくつ紹介したいと思う。

1、空耳の場合
 ニコニコ動画で見る限り、複数のユーザーが投稿し、ところどころの空耳コメントを入れるのは一般的である。ビリビリ動画では、もちろん同じ習慣があるものの、特定の誰かが空耳のコメントを投稿し、OPまたはEDの全曲をやるのも多かった[注4]。
 それでは、具体例を挙げつつ、説明していこうと思う。

例1:「アルスラーン戦記」OPの空耳@ビリビリ動画




 ご覧の通り、画面の上に緑色のコメントがあり、それはいわゆる「空耳弾幕」。特徴として、場所は上の真ん中、いつも同じ人が同じ色のコメントを打ち込む。「空耳弾幕」を作るには時間がかかるため、弾幕作者はいつもコメント欄か、弾幕の中あらかじめて宣言しとく、例えば「我是绿色空耳菌(君),现在开始施工(私は緑色空耳くん、今から空耳弾幕の工事をする)」。先に宣言しとくと、他のユーザーは同じ色を使わなくなるので、弾幕はより読みやすくなる。ちなみに、ここに二つの弾幕用語がある。
 ①空耳菌(君):空耳弾幕職人のこと。「菌」の中国語読みは「君=くん」と同じで、ちょっとわかいい言い方である。
 ②施工:弾幕を打ち込むことは「施工=工事」と言う。派生の単語として「施工现场=工事現場」がある。弾幕職人は弾幕を作っている最中動画を見てしまったことを指す。

例2:「この美術部には問題がある」OPの空耳@ニコニコ動画



例3:「この美術部には問題がある」OPの空耳@ビリビリ動画



 ニコニコ動画とあまり違いのないビリビリ動画の弾幕だが、若干カラフルな感じがする。推測だが、日本ユーザーは「弾幕(カラフル、多彩な表現)」と「コメント(デフォルト、たまに赤字)」を区別して使うことに対して、中国ユーザーはこの意識がないので、この結果になってしまったのではないと思う。

2、野生字幕の場合
 まず「野生字幕」という言葉の意味を説明しよう。野生の公式という言葉があるように、字幕組の翻訳ではないけれども、日本語の分かるユーザーが先に翻訳してみたという意味合いで理解していいと思う。ルールがあまりないが、字幕らしく下の真ん中に置くのは普通。色はデフォルトのホワイトが多いが、たまにキャラに合わせて色分けする場合もある。

例:黒バスNG集@ビリビリ動画

 
 ちょっと見づらいが、下の真ん中は二人の台詞で、きちんと緑と紫で分けられている。タイトルの「生肉」とはまだ字幕組に翻訳されていないアニメや動画のことで、「野生字幕君」は字幕組に翻訳されていないが、他のユーザーによる翻訳があるよという意味である。

3、黄色、緑色、ピンク...etcの場合
上の例を見ていると中国のオタクたちはよくいろんな色を使っている。キャラを分けるのはもちろん、それ以外でもいくつパターンがある。

例1:黄色 
 中国語を勉強している人なら分かると思うが、中国語の中、黄色にはわいせつやひわいの意味があり、日本語の「ピンク」とよく似ている。なので、エロいシーンを見る際やわいせつな考え方があったら、自己申告みたいに「あれなんで私いま黄色くなった」をコメントすることはよくある(赤ラインのコメント)。
(via:「この美術部には問題がある」11話@ビリビリ動画)

例2:緑色
 これも中国語に関係するが、NTRは中国語で言うと「戴绿帽=緑色の帽子をかぶる」になるので、NTRシーンのコメントを緑色で打ち込むのが上級者である。もちろん黄色との組み合わせも可能。


(via:「この美術部には問題がある」10話@ビリビリ動画)
 
 緑色弾幕のパターンはいくつある。上のシーンで例えをすると、
①我怎么变绿了=あれなんで私が緑色になった?
②我是女主绿=私はヒロイン緑です(もちろんキャラ名に変えても可、私は宇佐美緑ですとか
③@宇佐美=文字通りの意味で、@の後ろにNTRされたキャラが付く
 だいたいこの3種類があると思う。

補足:顔表立
 よく弾幕の中で「顔表立」を見られると思うが、それは「色(=中国語の顔色)は立場を表す」の意味である。例えば、魔法少女まどか☆マギカの中で、ピンク色を使って「顔表立」をコメントすると、私はまどか推しだという意味になる。

4、その他のシチュエーション
例1:yooooo
 まずyooooの元ネタはこちら↓ 

Don't watch an anime called Boku - YouTube

 おそらく日本でもこの動画は広がっていると思うが、yoooは思った以上に浸透していない。しかし中国のオタクの中、yooooはかなり高い頻度で使われている。もともと男の娘が出る動画で使われた弾幕であったが、使用範囲がだんだん広くなり、最近BLのシーンでも使われるようになった。

例2:囍



(via:「DAYS」ED@ビリビリ動画)
 
 囍は双喜字と呼ばれ、めでたい時使われているしるしで、特に結婚式でよく使用されている。BLGLNL問わず、カップリングの二人が画面上でアップされた時/カップリング成立の時/惚れた時などなど、赤文字で「囍」をコメントすると自分の喜びの気持ちが伝わる。ちなみに、カップリングの二人の距離が近すぎてそろそろキスしそうだけどキスできなかったとき、「按頭小分隊」の弾幕がよく見られる。それは「二人の頭を押し隊(たい)」「二人をキスさせ隊(たい)」の意味で、囍の弾幕の相性がなかなかいいと思う。

 いかがでしょうか。同じ弾幕系のサイトでもそれぞれローカルの特徴がたくさん見られると思う。今後、また面白い弾幕を見つけたら随時更新したいと思うので、どうぞ楽しみに。



注釈:
注1:ビリビリ動画においては、BiliBili正版のタグがつけられ、さらに電子透かしを埋め込んでいるアニメは放送権が有するものである。それ以外はユーザーアップロードコンテンツである。詳しくは→中国動画サイトの「大航海時代」が来臨、ニコニコ動画もそろそろ中国に進出したら?
注2:Fate/GOや魔法少女まどか☆マギカなど、一覧はこちら→bilibili遊戯中心 
注3:本記事においては、弾幕=画面上で流れるコメントという意味を用いる。「弾幕」の意味詳しくはことら→ 弾幕シリーズ(仮) 一、弾幕そのものとちょっと情報学っぽいもの(1月28日更新
注4:本ブログ以前でも取り上げたことがあるので、よかったら参考してください→おもろい中国語の空耳を翻訳してみたーー「太陽曰く燃えよカオス」「紅蓮の弓矢」